その後2021年の年明けからベースの残りを録り、深海スタジオに移ってギターダビングを開始。それと並行して春くらいから歌録りとコーラス録りを進めていきました。途中7月に俊コロナによる一時中断を挟み、2021年11月に録音は全て終了。この頃にアルバムタイトルを「YES GO?」 に決めました。
2022年の年明けからミックスそしてマスタリング。ようやく3月に音源は完パケしましたが、その後デザインなどを詰め、5月のリリースまで実に一年半の時間を要しました。俊とテッペイは全日程皆勤賞。もちろんエンジニアのコースケも。これだけ長い制作期間でのレコーディングは初めてでしたが、色んな意味で2度と作れないアルバムになっていると思います。まあアルバムってみんなそうなんだけど。とにかくコースケと定期的に会ってたので、遠かったけど横浜山手まで通った日々が今となっては懐かしいです。
では「YES GO?」の各曲の解説を少しづつ。
【1.相対論】
奇数の小節数でまわす曲を作ろうと思った所から始まった曲。俊ギターをストラトで録ったりハーフトーンでやったりと何テイクも録って結局いつものジャズマスターのフロントでかなりクリーン目な音色に落ち着いた。録ったものを何度も持ち帰って色々な状況で聴いてみて基本の音を決めました。スネアはイメージしてたよりピッチが高かったのでミックスでローピッチの音を足しました。歌録りはこの曲から始めました。歌録りの一曲目って緊張するんだけど、イメージしてた感じにするっと録れて、この温度感がその後の基準になった。
【2.surf loop rider】
ずっとやってきた文脈の音楽をLLPの音像で。俊ギターはフェンダーアンプにファズ、まっちゃんギターはマーシャル直です。プリプロで色々試して、bpmを遅いと感じるギリギリまで落としてグルーブを作りました。REC中にまっちゃんギターの弾き方をヘンなオルタネイトに変えたら急にグルーブが増してそれで録音。今回のレコーディングはまっちゃんミラクル出まくりでした。プリプロ段階では歌がちょっと低くてkeyを上げようか迷いましたが、ダブルのイメージが出たのでBのままで。アルバムタイトルのYES GO?はこの曲の中で2回出てきます。バンドのグルーヴが凄く良い感じで録れたテイク。
【3.brighten】
レコーディングに入る直前に出来た曲でその時は本当にアルバムに入れられるか未知だった。一応リズムは録っておいたという感じだったんだけど、イントロのギター(これもファズ)を録ったあたりからがぜん良い感じになってきて何度もRECしながらメロディーやアレンジやサウンドを考えていきました。なのでギターの録音も歌録りも一番最後。歌詞も歌録りの直前まで決まらなかったんだけど、完成したらこのアルバムを代表する曲のひとつになりました。ライブでは歌の最後の高いハモリをテッペイが歌うところがクライマックス。あれ結構高いのよ。
【4.night cruise】
カスミのボーカルはリズム録りが終わってギターもまだ録ってないかなり早い段階で丸一日使って録ってOK出たんだけど、ギターの録りが終わったら温度感が合わなくなってきて半年後くらいに再度トライ。レベルアップして戻ってきたカスミの良い歌テイクが録れた。カスミが歌うことで「時代」というワードを初めて使えた。俊ギターは何気にアルバム中で一番で歪んだ音が入っます。これはRATです。この曲も何気にbrightenと同じく5弦まで2カポで6弦は開放という弾き方。あとテッペイのベースがタイトで良いです。
【5.naked blue】
メインのこの俊ギターはファズ。手元でボリュームをかなり絞って親指の腹で凄く弱く弾いてます。音のニュアンスが面白くてあえて不揃いに弾いてます。ボーカルRECもマイクやプリアンプも色々試してみたんだけど結局コンプはあまりかけないでマイクにベタ付きで凄く小さな声で歌いました。色っぽくならないように優しく見守る視点を意識した。コースケのサイケなミックスが絶妙。
【6.五月の風】
kickを4小節シンコペーションしっ放しにしたら面白いんじゃないかとそのアイデアから作り始めた曲。まっちゃんギターのヘロヘロなニュアンスが良いテイク。歌は一回OKになったんだけど帰って聞いたらちょっとマッチョだったので頭下げてやり直させてもらった。そんでまた別日に一日かけて録り直しするもどうしても納得いかず。結局一番最初に一本つるっと歌った仮歌テイクがOKテイクになった。繋ぎなし。力の抜けた良い歌。あと間奏の俊ギターの最後の一音だけにトレモロかけてます。個人的にこの曲好き。
【7.flags】
4人全員で最初から最後までユニゾンで歌うというアイデアから始まった曲。そのためには4人がゆるく共感できる歌詞が必要でした。確かリズム録りもギターのダビングもこの曲から始めたんじゃないかな。なんの仕掛けもないシンプルな曲のシンプルな演奏なんだけど実は凄く良いバンドグルーブのテイク。歌をみんな歌ったあと、一本ずつ聞いてみたらまっちゃんがあまりにも自由に歌い過ぎててみんなで涙出るまで笑った。間奏のギターソロはオレのジャズマスターをまっちゃんが弾いてます。新鮮。
【8.life】
REC初日に録ったベースがカッコ良かったんだけどテッペイが納得いかずのちに何回かリトライ。しかしメンバー全員一致で最初のテイク推し。荒いけど勢いが良い。結局元のテイクがOKテイクになりました。こういう事ってRECあるあるですね。レコーディング入るまではクリーンギターにコーラスを掛けて80'sスカみたいにしたいとイメージしてたんだけど、だんだん90'sUSオルタナ方向へいって結局FUZZ全開になってしっくりきた。歌は最初からビースティーみたいなイメージだったのでダブルで。
今回のレコーディングで意識していた事としては、飽きのこない温度感と音作り。bpmは少し遅め、歌のニュアンスはギリギリの薄さ、ギターのニュアンスは大幅に残す。音圧は低め。歌詞の方向、など。そんな事を意識してのレコーディングでしたが、長い制作期間だった事でうまくいったところもあれば逆に難しかったところとありますね。やっぱりレコーディングは生ものなんだよな。良いのと良くないのから良いのを選ぶのは簡単なんだけど、良いのと良いのからどっちの良さを選ぶのかが本当に難しい。そんな超真剣の瞬間の積み重ねです。
とにかくこのLLPの2ndアルバム「YES GO?」無事完成出来てリリース出来て本当に嬉しい。出来るだけ多くの人に聴いてもらって、出来るだけ多くの人に面白がってもらえたら嬉しいです。
末長くよろしくです!